東京地方裁判所 昭和40年(手ワ)4084号 判決 1966年3月05日
原告 合資会社新井商店
原告 三陽印刷株式会社
原告 合資会社井上商店
原告 株式会社 百瀬
原告 雪印物産株式会社
被告 宝建工業株式会社
主文
被告は原告合資会社新井商店に対し、金四八五、一四七円、原告三陽印刷株式会社に対し、金三九七、〇七五円、原告合資会社井上商店に対し、金二六〇、九七三円、原告株式会社百瀬に対し、金一七一、〇二三円、原告雪印物産株式会社に対し金二六五、六九二円及びそれぞれに対する昭和四〇年二月九日から支払済迄年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。
この判決はかりに執行することができる。
事実
原告訴訟代理人は主文第一、二項と同旨の判決ならびに仮執行宣言を求め、請求原因として、いずれも被告振出にかかる左記約束手形のうち、原告合資会社新井商店は(一)の手形を、原告三陽印刷株式会社は(2)の手形を、原告合資会社井上商店は(三)の手形を、原告株式会社百瀬(旧商号を株式会社百瀬商店と称し、昭和四〇年一月八日現商号に変更したものである)は(四)の手形を、原告雪印物産株式会社は(五)の手形を現に所持する。
(一)、(二)、(三)、(四)、(五) 省略(手形要件)
原告らは、それぞれ右各手形を満期に支払場所へ呈示したが支払を得られなかった。
よって各原告は被告に対し、右各手形金およびそれぞれに対する満期から支払済まで手形法所定の年六分の利息の支払を求める。
と述べ、
被告の抗弁に対し、
抗弁(一)において被告が主張するが如き合意の成立したことは否認する。本件手形振出に関し被告会社取締役会の決議かなかったことは不知。
と述べ、<省略>被告会社代表者は請求棄却の判決を求め、「請求原因事実は認める」と答弁し、
抗弁として、
(一) 省略(原因関係の抗弁)
(二) 被告会社においては、代表者が会社名義の手形を振り出すに際しては取締役会の決議を必要とする旨定款で定められてるところ、本件手形の振出に際してはなんら右決議がなされていないので、振出は無効である。
と述べた。
理由
原告主張の請求原因事実は当事者間に争いがない。そこで被告の抗弁について考えてみるのに、先ず(一)の抗弁は証拠上未だ抗弁事実を認めるに足りないから採用できない。
次に会社代表者は会社の営業に関する一切の裁判上および裁判外の行為をなす制限を有するのであって、右代表者に加えられた制限を以て善意の第三者に対抗しうるものではない。本件手形が被告会社代表者によって振り出されたものであることは当事者間に争いがないから被告が抗弁(二)で主張するように、かりに被告会社の定款において、代表者が会社名義の手形を振り出すについては取締役会の決議を要する旨定められており、本件手形振出に際し右決議がなされた事実はなかったとしても、右振出の効力になんら欠けるところはないものといわねばならず、右抗弁もまた採用の限りではない。<省略>